こんにちは、店長です!
東京都にお住まいのお客様から羽毛布団リフォームのご依頼をいただきました。
2008年に購入したダウナですが、大分ヘタってしまったので、リフォームしたく思っております。
購入当時の軽くて肌触りの良い感じを再現したいのですが、アトピー体質なのであまりホコリが出ないようにしたいです。リフォーム可能か、診断をお願い致します。
というお問い合わせをメールでいただいたのが始まりです。
2008年購入であれば使用期間はマックスでも10年程度なので、中に入っている羽毛の状態はそこまで悪くないのでは?とこの時点では想像していました。ダウナに使用されている羽毛は品質が良いですから、10年ちょっとで壊れてしまうことはないだろう、と。
しかし、お客様は「布団が大分ヘタってしまった」と仰っています。
う~ん、そのヘタリってどの程度なんだろう。これは一度頭をリセットして先入観を捨てた方がよさそうです。
状態を細かくチェックしたうえでリフォームできるかどうかをきちんと判断すべきだと思い、まずは当店まで羽毛布団を送っていただくようにお願いしました。
お預かりしたダウナの状態は?
表示ラベルには「20081_」という数字。お客様が仰るとおり、2008年に製造・販売されたダウナです。サイズはシングルサイズ(155×210cm)。
送っていただいたダウナの状態は想像以上でした。生地の破れがいくつもあったので布団カバーを外さずに送ってもらったのですが、ファスナーを開けると大量に羽毛が吹き出していました。
この状態では羽毛布団としての機能を保つことはできません。使うごとに羽毛がホコリとして出てきてしまうので早めに対応した方が絶対に良いです。
こんな感じの穴・破れをいくつも発見してしまいました。おそらくコレはどこかに引っ掛けて破れたという訳ではなく、使用するうちに汗や湿気・皮脂汚れが付着した生地が脆くなってしまった結果だと思います。ダウナの生地は特に薄くて柔らかいので、このような現象が起きやすいことは事実です。
布団から羽毛を取り出してみました。明らかに劣化していて、触ってみると湿気を含んでいるというかちょっと濡れているような状態に。何というか、重たい、湿気でシナシナになったポテトチップスみたいな感じです。
ホントならもっとフワフワ宙に浮かんでしまうぐらいのダウンなのですが、全然膨らんでくれません。お客様の言うとおり、羽毛は完全に「ヘタっている」です。
取り出した羽毛を細かく分類していきます。全体的に湿っているのですが、ダウンがボロボロと崩れてしまい、糸くずのようになっているものが多くありました。
写真に写っている部分はかなり劣化が進んでいるので再利用できないでしょう。
かろうじて元々の大きさを保っているダウンも発見。ですが、宙にフワフワ舞う力は現段階ではゼロに近いです。細かいホコリにまみれてしまい、大きく開くことが出来ない状態ですね。
なぜここまで羽毛が傷んでしまったのか?
ここまで羽毛布団の状態をチェックした当店の見解としては、
- 生地の破れ・痛みがひどく、この状態ではご使用に支障をきたすレベルであること
- 羽毛の劣化も見られ、ダウンが壊れてファイバー化している部分が多くあること
- 特に湿気の溜まり方がひどい。羽毛が湿っているせいで膨らむ力がほとんどなくなっている状態
- 再利用できそうな羽毛は全体の半分程度であること
この結果はお客様に包み隠さずすべてお伝えしました。
ここで私が疑問に思ったのは「10年ほどの使用でここまで羽毛が劣化するのか?」ということ。ダウナであろうと一般的な羽毛布団であろうと、ここまで羽毛に湿気がたまったりファイバー化したりするのは今までの経験ではなかったことです。
そこで、お客様に今までのダウナの使用状況を聞いてみました。すると、
- 「10年間、毎日ダウナを使っていた。冬でも夏でも毎日」
- 「10年間、ほぼ日干ししたことがない」
という2つのポイントを聞くことができました。
まず、10年間毎日ダウナを使用していたこと。これ自体に特別問題はありません。ダウナは通気性の良い生地が使用され、羽毛の量をたっぷり入れている訳ではないので、春や夏でも(エアコンをかけてお部屋なら)快適に使うことができるでしょう。事実、季節を通して毎日ダウナを使用している方は多いです。
問題なのはふたつめの「10年間、布団を干したことがない」こと。これがおそらく今回の羽毛劣化問題の原因だと考えます。
人間は睡眠中に少なからず汗をかいたり目に見えない水蒸気を発生させています。ここから生まれる湿気が布団の中に溜まってしまったり、梅雨時期や冬の結露の影響でお部屋の湿度が高くなることで必然的に布団が湿ってしまうことがあります。
湿気は羽毛の大敵です。大きく開いて空気を含むことができなくなるので保温性が悪くなったり、小さく固まってしまうので擦れて粉ごなになりやすくなったりします。羽毛布団は月に一回は干したり布団乾燥機を使っての湿気対策が必須です。
なぜ10年間日干しをしなかったのか?
なぜ10年間日干しをしなかったのか。それはダウナを購入したときに大塚家具の店員さんから、
「ダウナは湿気調整に優れているので、干さなくて大丈夫ですよ」と言われたからだそうです。
ことの真偽をはっきりさせるために大塚家具さんに電話してみました。
その回答として、
ダウナの商品説明時には確かにそのようなことをお伝えしている。その際にはダウナは干す必要がないとは言っておらず、干さなくても良いという表現である。ダウナは日干ししていただいても全く問題ない。
羽毛に湿気がたまるのはご使用になる方の体質や寝室環境、部屋の換気具合にもよるので、一概にはいえない。
というものでした。
ダウナは通気性の高い生地を使用していて、羽毛も品質が良いので湿気調整の能力が高い。だから、特別日干ししなくても湿度コントロールできますよ。というのが大塚家具の見解です。
理論としては分かりますが、その言葉をお客様が信じて使っていたダウナの実物を見ると何ともいえない気持ちになります。
何よりお客様のお気持ちを考えるといたたまれません。せっかく良い商品をお使いいただいているのだから、ご使用方法やお手入れについてもきちんとご紹介するべきです。
当店では、ダウナは日干しor乾燥機でしっかり湿気対策するべきだとお伝えいたします。
リフォームでどこまでキレイに復元できたのか?
さて、今回のお客様からお預かりした羽毛布団をどうするのか。羽毛の劣化具合から考えて、新品でのオーダーメイドもおすすめいたしましたが、
再利用できる羽毛が少しでもあるのならば、それを活用してリフォームしてほしい!
というご希望があり、検討に検討を重ね、当店で出来る限りキレイに復元しよう!と覚悟を決めました。
※チェック結果の通り劣化が激しいので、羽毛のふくらみが復元するかどうかは保証できない旨をお伝え済みです。
そして出来上がったのがこちら。まずはその仕上がりをチェックしていきましょう。
<リフォーム内容>
- シングルサイズ⇒シングルサイズへのリフォーム
- プレミアムダウンウォッシュ(布団を解体して取り出した羽毛を直接洗浄)
- 新品羽毛の補充:吉林省・スティッキーホワイトマザーグースダウン95%(DP440相当)を500グラム補充
- 新品生地:綿100%・80番手 平織り(1㎡あたりの重さ:94g)
- キルティング:たて6×よこ5マスキルト マチの高さ8cm
- 最終的な羽毛充てん量:1.1kg仕上げ
リフォーム参考価格:75,000円(税込)
一番気になるポイントが羽毛の復元具合。その結果がこちらの写真です。
あれだけ劣化していた羽毛がプレミアムダウンウォッシュでここまで綺麗に復元することができました!
湿気を含んでいた羽毛をしっかりと洗浄・乾燥させ、ホコリを丁寧に取り除いた結果です。やっとダウナらしく、大きく膨らんでいかにも暖かそうなダウンがみえました。
やはり劣化のあとはみえますが、それでもここまで大きく開いたダウンが残っていたことに驚きです。
羽毛の元々の量1,050gから洗浄と除塵を経て、残ったのは600gのダウン。半分以上は再利用可能の羽毛として残すことができ、そのことをお客様にご報告したときには大変喜んでいただけました。
残った600gの羽毛に、補充用として足したのは「中国・吉林省(スティッキー)ホワイトマザーグースダウン」。ダウン率95%・手選別により大きなダウンのみを集めた原料を500g補充し、保温力・弾力性・耐久性をプラスします。ホコリの混入も極めて少ないので、アトピー体質だという今回のお客様にも安心しておすすめできる羽毛です。
生地には綿100%の平織り生地をチョイス。ダウナの軽い着心地をうまく再現しながら、通気性の向上と生地自体の耐久性を意識してお薦めいたしました。
これからは定期的に干していただいたり、場合によっては丸洗いなども検討しながら「いかに長く愛用できるか」を考えたリフォーム内容です。ぜひこれからも毎日気持ち良く羽毛布団をお使いいただければ嬉しいです!
2019年2月22日、商品が無事届いたというご連絡をお客様からいただきました。
今までの布団が本当にフカフカになっており、軽さもダウナとの違いを感じません。大満足です。
今後は長持ちするように、日干しやお手入れをきちんとしたいと思います。本当にありがとうございました☆
リフォームの出来栄えにご満足いただけたようで本当にうれしいです!
ぜひこれから気持ち良く、そして長くご愛用いただければ幸いです。このたびは誠にありがとうございました!