こんにちは、店長です!
もう起きなきゃいけないのにあったかい羽毛布団から出たくない。そんな朝が続く今日この頃。皆さまはどんな羽毛布団を使っていますか?
羽毛布団といえば中に入っている羽毛(ダウン)の品質についてお客様から質問されることが多いのですが、羽毛と一口に言ってもポーランドやハンガリー、ロシア、フランス、カナダ、ドイツなどさまざまな産地ごとに特色があり、鳥の種類・ダウン率・保温性どれをとっても一つひとつが異なるので純粋な比較を行うのって相当大変です。
とりわけ評価が難しいのが中国産の羽毛。ポーランドなどのヨーロッパ系に比べて「質が悪い」と一括して判断されることが多いので、中国=安いけど質が悪いっていうイメージが強く根付いているのが現状です。僕もそういう固定観念のもと、中国産よりもヨーロッパ産の方が品質が上だと単純に考えていました。
そんなときに「中国でも良い羽毛をつくっている所があるよ!」という話を聞いて、実際にサンプルを仕入れてみたら白くてフワフワしてて、確かに良さそう。
あれ、これはもしかしたら中国=質が悪いと一括で言っちゃうのは間違いだったかもしれない・・・、と思い始めました。
いざ中国・吉林省に!
こうなったら中国産の羽毛事情を徹底的にチェックするしかねぇ!
ということで今回訪れたのは、中国の北東に位置する吉林省。安徽省と並び中国のなかでも有数の羽毛生産地です。
吉林省の面積は約18万平方キロメートルで北海道の約2倍の広さ!さすが中国、スケールが違うぜ!
市の中心街から車で約1時間。農村の道をずんずん奥に入り込んでいくと水鳥が飼育されている現場に到着しました。
湖の近くにはたくんさんの鳥が!
こちらの農場で飼育されているのは水鳥のグース(がちょう)。約7,000羽が飼育されています。
写真はメスのグース。今年の春ごろに生まれたとのことで飼育期間は約半年ほどでしたが近くで見ると結構大きかったです。ここから卵が産めるようになるまで(約1年半ほど)飼育されていき、体長が大きく成長した段階で羽毛を採取するそうです。いわゆるマザーグースダウンですね。
農場の辺り一面には湖が広がっていました。グースは足が弱いのでずっと陸の上にいると自分の体重で足が曲がっちゃいます。だから水の上に浮かんで足にかかる負担を軽くする時間をつくってあげないといけない。グースを家畜として飼育する場合は、この水場を確保することがとても重要です。もちろん水質も綺麗な方が良いです。
こちらの農場は近くに民家も何にもない広い土地なのでとっても静か。ゴミもなし。グースがストレスなく元気に成長できる環境が整っていました。
この日(11月13日)の気温は3℃。これでもまだ温かい方だということで、真冬の1月・2月になるとマイナス20℃以下になることも珍しくないそうです。想像できないくらいめちゃくちゃ寒いんだろうな・・・。
ポーランドの冬も劇的に寒いですがそれに匹敵する環境の吉林省。寒い地域に住む水鳥の方が保温性の高い羽毛をたくわえるということを考えれば、吉林省=羽毛の産地として好条件の地域だといえそうです。
ちなみにここで飼育されているグースの食べ物はトウモロコシがメイン。もともとグースは草食です。だからたくさん食べても脂肪が付きにくく、あまり変なニオイがしにくいっていうこともあります。
対してダック(あひる)は雑食で肉でも草でも何でも食べます。よく食べるのは良いことなのですが余計な油脂が付いて体臭がキツくなる場合が多いんですよね。ダックとグースの原毛を比べるとニオイ有り無しの差が良く分かります。
農場のオーナーさんと記念写真。寒くて笑顔がぎこちなくなってしまったのはご愛嬌です。
羽毛の精製工場へGO!
さて、農場の次に向かったのは羽毛の精製工場です!
約5万平米(東京ドームよりちょっと大きいくらい)の敷地のなかに、先ほど訪問した農場などから仕入れた羽毛原料を選別したり綺麗に洗浄したりする設備があります。
この会社の社長・張さんに施設の案内をしていただきました。
工場を一目見てまず感じたのは施設の清潔さ。羽毛の加工場なのでホコリや羽毛が飛びまくっているのかと思いましたが、全然そんなことなかったです。これはポイントが高いですね。
こちらで行われている羽毛原料の精製工程が書かれています。要約すると
①羽毛の原料が仕入先や農場から到着する
②原料を手作業で選別し、ゴミを取り除く
③1回目の洗浄・乾燥・冷却
④羽毛選別機で羽毛を6段階に分ける
⑤選別した羽毛を洗浄・乾燥・冷却する(2回目)
⑥袋詰めしてパッケージング
という流れ。
羽毛の洗浄を行うマシーン。羽毛の加工において一番重要だと言ってもよいのがこの洗浄工程で、洗浄が中途半端だと臭いや汚れ・ゴミが残ってしまって羽毛の性能が十分に発揮されないこともあるので注意が必要です。
羽毛選別機がめちゃめちゃデカい!12mほどの高さがあるそうで、これだけ大きな設備は世界でも珍しいとのこと。
ここで羽毛をほぐしながら風に乗せて選別することで、良質なダウンだけを採取したりフェザーだけを取り除いたりすることができます。
張さんに見せてもらった羽毛原料。これ、まだ洗浄など全くしていないのにゴミがとてつもなく少ないんです。
普通ならもっと草やゴミが羽毛のなかに混じっているはずなのですが、加工前に行っている手作業での選別でゴミや大きなフェザーをあらかた除去しているからこれだけ綺麗になっているそうです。
もちろん機械で洗浄したり選別していけば綺麗になるのですが、あんまりグルグル機械で回しすぎてしまうと羽毛に余計な傷がついてしまいます。だから手選別で大きなゴミを取ってから本核的な加工を行う方が良い、と張さんは考えているそうです。
とても理にかなっていることだし、品質に対するこだわりを感じた瞬間でした。
品質検査の現場も視察させていただきました。
精製が完了した羽毛を細かくチェックして、ダウンとフェザーの比率が間違いないかどうか・ファイバーが多く混入していないかどうかなどの品質検査を行っているそうです。
羽毛を一つひとつピンセットで選り分けながらチェックするという気が遠くなるような作業。とてつもなく地味な作業ですが、こういう手作業が積み重なって羽毛の品質が守られていることが確認できました。
マザーグースダウンのスティッキータイプ。スティッキーとは粘りが強いという意味で、大きなダウンが連なることで空気を含みやすくより強いパワーと膨らみを実現しているダウンです。当店でもこれを使って羽毛布団をつくったり、リフォームの補充羽毛として活用したりしています。パワーが凄くあってホコリの混入も少ないのでお薦めですよ。
弾力が強いのでモチモチしているし保温性も高いから、少ない量でも暖かみを感じることができます。
その他にも色々な羽毛を見させていただきました。中には野生のグースから採取した特殊な羽毛など興味心をくすぐられるものも。
また新しい羽毛布団を作ってみたいという気持ちが芽生えてしまいます!
やっぱり現場を見て良かった!
今回視察した農場・精製工場は環境、技術ともに高いレベルのものが揃っているところだと確認できました。品質についても申し分なく、使って満足できる羽毛布団がつくれそうです。
もちろん、羽毛は天然素材なので品質にバラツキがでるのは当然のこと。これは中国に限らず、ポーランドでもハンガリーでも日本でも同じです。きちんとしている所もあればレベルが下がる所もあるでしょう。
大事なのは、イメージや思い込みだけでなくきちんとモノを見てから判断すること。これを今回学びました。何でも試して触って見てから考えるようにしないといけないなってことに改めて気づきました。
今僕が使っている羽毛布団のダウンは今回視察した中国吉林省のもの。→今使っている羽毛布団はコレ(吉林マザーグースダウン95%)
去年の冬に試しにつくってみて着ているのですが、暖かさと着心地は抜群です。中国産の羽毛ってどうなの?と最初は半信半疑でしたが当たりでした。ヨーロッパ産と比べて値段が安いのでコストパフォーマンスにも優れています。
これから数年使ってみて、羽毛の耐久性などがチェックできるようになったときにまたレビューしたいと思います。
それでは、また!