15年以上使用している丸八製の羽毛布団はリフォームする価値があるのか?

こんにちは、店長です!

羽毛布団のお手入れをしたいけれど、どの方法が一番良いのかわからない…。そもそもリフォームや丸洗いできるかどうかもわからない…。そんなご相談を日本全国のお客様からいただくようになり、ひとつひとつの事例に合わせて細かく対応していくごとにたくさんの経験をつみながら「羽毛布団と一口に言ってもいろいろなケースがあるなぁ」としみじみ感じる今日このごろです。

今回は東京都にお住まいのお客様からこんなメールをいただきました。

15年以上使用しており、一度もクリーニングに出したことがない状態です。

かなり生地が擦れてしまっていて羽毛が飛び出る状態なのですが、お送りする際はその状態でケースに入れてお送りしても宜しいのでしょうか。

また、羽毛の状態により、リフォーム不可のケースもありますでしょうか。

生地が破れて羽毛がたくさん吹き出していることが一番のお悩み。ただ、羽毛布団を一度もクリーニングしたことがない、というはそこまで問題ではありません。カバーリングをこまめに取り替えていただくことで汚れの付着防止になり、定期的に風を通す・日干しすることで湿気を逃してもらっていれば中身の劣化も抑えることができます。

※過度な丸洗いクリーニングは生地を傷めてしまう可能性があり、羽毛の片寄りと劣化にもつながりますので当店ではあまりおすすめしておりません。3年から5年に一度くらいの頻度が丸洗いの目安だとお伝えいたします。

生地が破れていても中身の羽毛が元気であればリフォームは可能ですよ!とお伝えし、もしリフォームに適さないと判断した場合にもきちんと詳細をご案内することができるということで、実際に羽毛布団をお預かりいたしました。

到着した羽毛布団がこちら。羽毛が吹き出してしまうため、カバーを付けたままお預かりいたしました。

品質表示タグの印字は消えていましたが、製造メーカーは「丸八真綿」と確認することができました。

事前にお客様から聞いていたとおり生地にはかなり大きな破れが発生していて、ご自身で縫いながらなんとか補修しておられました。

破れていた部分は布団の上側、ちょうど首や顔に近い部分でした。汗や皮脂が付着してシミができていたため、生地自体の強度が弱っている可能性が高いです。触るごとにどんどんと破れが大きくなってしまうため、早急に対応が必要だと感じました。

カバーをすべて外してみるとこんな感じ。羽毛の膨らみを確認することができます。ただ、弾力性が少し弱くなっているかなといった印象。元気な羽毛を触ると手を押し返してくる弾力を感じるのですが、お預かりした羽毛布団はややスカスカの手触りです。もしかしたら羽毛が小さく劣化しているかもしれません。

中に入っている羽毛の状態をチェックするため、生地を開いて羽毛を取り出してみました。

取り出した羽毛がこちらです。品質表示ラベルを確認することができなかったので正確な情報は不明ですが、白くてふわふわのダウンが多く入っている形です。硬い羽根(フェザー)の混入は少ないため、最低でもダウン90%/フェザー10%といった品質の羽毛だと予想いたします。

取り出した羽毛をより詳しくチェックするため、手作業で選別していきます。

手で羽毛をほぐしていくと細かいホコリがたくさん出てきました。これは経年劣化によって羽毛が小さく崩れてしまった跡です。

羽毛が小さくなってしまうと膨らむパワーが弱くなり空気を含むことができず、結果的に保温性が下がります。また生地からホコリの吹き出しが多くなってくることもあるため、このあたりの変化には注意が必要です。

今回お預かりした羽毛布団をチェックした結果としては、ホコリの量が平均よりも多いという判断でした。

羽毛を洗浄しながらホコリを綺麗に取り除く加工(プレミアムダウンウォッシュ)を行えば今回の羽毛も綺麗に回復させることが可能です。ただし、劣化したホコリとして取り除く量が多くなるため、再利用できる羽毛の量が少なくなっていきます。新品羽毛をたくさん補充すればもちろんOKではありますが、そこまでしてリフォームすべきかどうかをお客様とともに考えていきます。

大きくて綺麗な形を維持している羽毛も見つけることができました。良質なダウン、空気を含みながらボリュームを生み出してくれます。

このような綺麗な形をみると再利用できそうに思うんですよね…。ただ、そこまで良質なダウンが多く残っているイメージが少なくて、というのが状態チェックの正直な感想でした。

  • 生地の劣化とともに中身の羽毛にもダメージが蓄積されている。
  • 羽毛が崩れてホコリのように小さくなっているため、保温性やボリューム感が低下している。
  • 綺麗な形を維持している羽毛も残っているが数は多くない。

以上の結果をお客様にすべてお伝えし、メールとともにお電話でもじっくりと打ち合わせを行いました。

リフォームした場合きちんと保温性は回復するのか、あと何年気持ちよく使用することができるのか、リフォームにかかる金額。さまざまな条件を天秤にかけた結果、お客様といっしょに出した答えは「リフォームではなく新しい羽毛布団をつくろう」ということでした。

これからも長く使い続けるために、そして10年後にもう一度リフォームして状態を綺麗にたもつことができるように。お客様が抱いていた着心地への希望もしっかり叶えることができるように羽毛布団を作製していきます!

出来上がった羽毛布団。

<新品羽毛布団オーダー内容>

  • サイズ:シングルサイズ 
  • 羽毛:ホワイトダックダウン93%(手選別)DP400
  • 羽毛量:1.1kg入り
  • 側生地:綿100%80番手平織り(軽量タイプ)
  • たて6×よこ5マス 立体キルト縫製

出来上がり金額:66,000円(消費税・送料込み)

※出来栄えを撮影した写真は夕方に撮影したためオレンジ色が強く出てしまっています。実物はホワイト無地の生地にて仕上げております。

ふんわりとしたボリューム感と保温性を実現しながらご予算の範囲内に価格をコントロールするために、ホワイトダックダウン93%という羽毛原料を採用いたしました。

グースよりも体長が小さいダックは羽毛の品質的に劣るという評価を一般的にはなされますが、この品種は手作業で大きな羽毛のみを選別しているため、下手なグースダウンよりも力強い弾力と保温力を実現することができます。ダウンパワー(DP)は400です。

軽やかな着心地が好み、というお話もお客様からいただいておりましたので綿100%平織裏生地を採用いたしました。一般的なサテン織り生地のぼってりとした着心地に比べるとふわっと体を包み込む感覚が強くなり、これからの季節はもちろんですが春や秋に重宝すると思います。

完成した羽毛布団をお届けしてから5日後。お客様から感想メールをいただきました。

9日日曜日、午前中に無事に受取りいたしました。お手紙も付けて頂きありがとうございました。

開けた瞬間、とっても軽やかでふかふかな羽毛布団で感動いたしました!写真よりもふっくらしていて羽毛が元気に膨らんでいて、1.1キロでもこんなにボリュームがあるんだなとびっくりしました。

仕立てもとても丁寧で、寝心地はふんわりと体を覆ってくれる感じで、とにかく毎日ぐっすり眠れています!睡眠の質が格段に上がりましたし、毎日布団に入るのが楽しみです!

本当に三浦さんにお願いして良かったです。こんなに素敵な布団を作って下さりありがとうございました!大切にします。また何かご相談などありましたらご連絡させて頂きます。今後ともよろしくお願いいたします。

羽毛布団の着心地にご満足いただけたことはもちろんですが、何よりも「毎日ぐっすり眠れている」ということが一番嬉しく思います。こちらの方が嬉しくなるお言葉をいただき、本当にありがとうございます!

これからますます寒くなってきますが、羽毛布団の心地よい暖かさに包まれながらぐっすりおやすみくださいませ☆

今後とも何卒よろしくお願いいたします!