買い替えよりもリフォームの方が良い?19年使用したダウナ羽毛布団をお手入れする!

こんにちは、店長です!

毎日暑い日がつづいていますが、次々にやってくる台風の影響も心配な2023年夏。ゲリラ豪雨のような大雨が降り続くこともありますので天気ニュースは常にチェックです。

これからお盆休みの連休がはじまりますが、急な天候変化にはくれぐれもお気をつけいただきながら。楽しい連休をお過ごしくださいね☆

19年使用したダウナ。リフォームできる?

さて、今回は東京都にお住まいのお客様からお預かりした羽毛布団についてご紹介いたします。

当店のお問い合わせフォームからメールにてご相談いただいたお客様(T様)。メールにはこんな内容が記されていました。

19年使用した大塚家具ダウナのダブルサイズです。寝心地が良く大変気に入って使用してきました。

枕元の側生地にいくつか穴が空き、縫って使用していましたが、側生地の汚れもひどくなり、もう一度ダウナで買い換えを考えましたが、高価であることを改めて認識し、まだフンワリして寝心地は良いので何か策がないか探していたところで御社ホームページを見つけました。リフォーム可能なら是非お願いしたいと考えています。

私のダウナに年式のタグはありません。185/210cm 1240gr とタグに記載があります。

新品羽毛の補充はポーランド産ホワイトマザーグースダウン95%/フェザー5%、新品生地は綿100%・100番手平織織り(1㎡あたりの重さ:85g)でと思っております。

よろしくお願いいたします。

大塚家具ダウナ羽毛布団の着心地を大変気に入っていらっしゃるT様。購入から19年が経過しても羽毛の膨らみ自体は維持されているものの、どうしても側生地の汚れや破れが発生してしまい、リフォームするか・買い替えするかを検討されていたようです。

大塚家具の公式ホームページに掲載されている2023年8月現在の情報では、ダウナ・ダブルサイズを新品で購入する場合268,000円(税込)かかります。品質が高いゆえにお値段もそれなりにかかるというのは事実です。リフォームなら大体の概算で新品購入の半値くらいでお手入れできると思います。

またT様が使用しているダウナには1,240gの羽毛が入っているということですが、現在はNレギュラーというシリーズに変更され羽毛量が40g減って1,200gになっています。生地の仕立て方も19年前とは仕様が変更されているため、この辺りも考慮しなくてはなりません。

1988年から販売されているダウナは「軽くてあったかい」という羽毛布団の魅力を最大限に発揮することを目指した寝具です。

布団の中に入っているのは羽毛産地として名高いポーランド産のホワイトマザーグースダウン95%/フェザー5%という原料です。3年から5年ほどの年月をかけて大きくなったグースの体から採取される大きなダウンは空気をたっぷり含みながら膨らみ、心地よい保温性と弾力性を実現してくれます。

少し話が横道に逸れますが、

2023年7月、店長はポーランドに6日間滞在して、グースを飼育している現場やお店で取り扱っている羽毛の生産工場を視察しました。羽毛の現場は以前中国に行ったことがあるのですが、ポーランド訪問は今回が初めてです。

ポーランドを隅から隅まで移動するタイトなスケジュールかつ、ポーランドに入っている間はお店をお休みにしたもので、皆さまにはかなりご迷惑をおかけしたのですが、やっぱり「百聞は一見に如かず」でした。無理してでも行って良かった!

ポーランドの羽毛がなぜ有名で高品質だと言われるのか。グースが成長する過程、羽毛が綺麗に磨かれていく光景とマザーグースダウンの魅力。これを改めて知った今だからこそ「羽毛は捨ててはいけない、使える限り再利用するべき」だとはっきり伝えることができます。

たくさんの人が時間をかけて育てるグース、そして手間暇をかけて採取される羽毛、ただでさえ貴重な資源であるとともにダウナのような高品質なものは側生地が汚れたぐらいで捨ててしまうのは非常にもったいないです。

もちろん劣化が進みすぎてリフォームできないほどになってしまった場合は省きますが、自然が育んでくれた大事な羽毛・限りある資源である羽毛は簡単に捨てて良いものではありません。20年、30年と長く使うべき、むしろマザーグースダウンならそれぐらいの長期間使用に耐えうる性能がありますから、ぜひ安心してリフォームやお手入れという方法を活かしてほしいなと思います。

T様からお預かりしたダウナのお話に戻ります。

実際にお預かりしたダウナをチェックしてみると、側生地に黄色いシミや汚れが広がっていることを確認いたしました。メールでも記されていたところですね。見た目にも汚れがひどく写ってしまうため、使い続けることができるのか確かに気になります。

顔や首、胸に近いところは汗をかきやすいので、おのずと羽毛布団の汚れもひどくなりがちです。シミが付着するごとに生地はだんだんと弱くなり破れや穴があきやすくなります。

今回も既に生地が破れてしまっていましたが、T様ご自身でなんとか補修するべく糸で縫いあわせていました。なんとか無事にみえますが小さな穴からでも羽毛は吹き出してしまうため、カバーを付け替えたり普段のご使用にも支障をきたしていたことと思います。

出典:https://www.kao.co.jp/8×4/lab/article04/

汗のかき方は男女差とともに年齢差もありますが、総じて男性の方が発汗量が多い傾向があります。胸や背中あたりからの汗量が多い理由としては「脳の温度調整」を重視するため。大切な脳の温度が上がりすぎると生命の危機につながる可能性がありますので、汗はとっても大事な存在です。

ただ、布団を見ると上のデータどおり男性が使用する布団かつ首や顔に近かったであろう部分の汚れが比較的大きいということは明白です。シミや汚れがつかないように布団カバーをこまめに取り替える、そして定期的に布団丸洗いやリフォームというお手入れを活用すると、綺麗な状態が長続きしてくれます。

では、布団の中身をチェックしていきましょう。

生地を開いて中に入っている羽毛を取り出してみます。

取り出した羽毛がこちら。生地の汚れとはまったく違う、白くてふわふわの羽毛がたくさん出てきました。

ここから手作業で選別して羽毛の状態を見極めていきます。

まずこちらは経年劣化によって壊れてしまった羽毛の残骸やホコリです。糸くずのように見えるのは羽毛のファイバー。長年使用によって羽毛同士が擦れ合い粉々になってしまったものや抜け毛のようなものです。

19年使用していた割にホコリの量は少ないです。マザーグースダウンならではの強度が劣化の少なさにつながり、ゴミが出てこなかったことが要因だと考えられます。

あとはT様の使用状況も普段から丁寧だったのではと予測します。布団を優しく畳んだり、空気の入れ替えを適度に行ったり、生地には汚れが広がっているものの羽毛の状態は良好だとこの時点で判断することができます。

摩耗によって小さくなった羽毛はどうしても膨らむ力が弱まっているため、本来の保温力を発揮してくれる性能がなくなってしまいます。そのままにしておくと生地からの吹き出しにつながる可能性があるため、ホコリやゴミとともに取り除きながらきちんとリフレッシュしていきます。

一方こちらは大きくて綺麗な形を維持している羽毛です。ダウンと呼ばれるたんぽぽの綿毛のような部位。グースの胸あたりに多く生えている、ふわふわ・もちもちとした毛です。

大きさを500円玉と比較してみると、その立派な形が際立ちます。マザーグースダウンでも採取される年代によって品質に差がでるのですが、この年は当たり年だったのでしょう。密度が高くて力強いダウンです。

このような貴重な羽毛を見ることができる・活用できるということが、寝具専門店という仕事の真髄なのではないかと感じます。絶対に捨ててはいけない、これからもT様が長く愛用できるようにお布団を仕上げていく。

以上の結果をお伝えし、T様からお預かりしたダウナはリフォームする価値が十分にあるというご報告をいたしました。

リフォームの完成。

<リフォーム実施内容>

ダブルサイズ→ダブルサイズへのリフォーム

  • プレミアムダウンウォッシュ(布団を解体して取り出した羽毛を直接洗浄する)
  • 新品羽毛の補充:ポーランド産ホワイトマザーグースダウン95%/フェザー5%を合計300g
  • 生地の新調:綿100%・110番手平織り(ドイツ製バティスト、1㎡あたりの重さ:75g)
  • ダブルサイズ(190×210cm)にお仕立て
  • 羽毛量:1枚あたり1,240g入り
  • たて6マス、よこ6マスキルト(マチの高さ8cm)

出来上がり合計参考価格:120,000円(消費税・往復送料込み)

生まれ変わった羽毛布団がこちら。ふんわりと体を包み込んでくれる、優しい羽毛布団に仕上がりました。

サイズはダウナよりも横幅5cm広い190cmに。日本基準のダブルサイズに仕上げることで掛け布団カバーとの相性がぴったりになります。

羽毛は綺麗に洗浄したあとゆっくりと時間をかけて乾燥させます。羽毛は一度濡れると乾くのに時間がかかってしまうため、元々のふわふわの状態を取り戻すためには乾燥作業をきっちり行えるかどうががとても重要なポイントです。

側生地はドイツ製の平織り生地を採用いたしました。ダウナと同じく軽量かつ通気性が高い生地ですので、品質の悪い(ホコリやゴミの混入が多い)羽毛を入れてしまうと吹き出しが多くなってしまうため、取り扱いにはかなり注意をしなければいけない生地です。

今回お預かりしたような良質マザーグースダウンと合わせると、焼き立ての食パンのようにふんわりと膨らみが広がり、その柔らかさと弾力性に誰もが驚くような仕上がりを実現することができます。

一般的な羽毛布団では絶対に出せないフィット感。そして体全体で感じることができる暖かさ。

T様には自信を持ってご報告できるリフォームの仕上がりになりました!

仕上がり具合をご報告するとT様から、

写真からも仕上がりの良さが伝わってくるようで、今はエアコン入れっぱなし+夏綿毛布なのですが、届いたら、エアコンの温度低くして羽毛布団で寝てみようと、妻と話しています。

到着が楽しみです!!

というコメントをいただきました。

この羽毛布団に体丸ごと包みこまれる感覚は、おそらく経験した人にしか分からない気持ちよさかもしれません。なんとも言い難い、形容しにくいですが、幸せな時間であることは間違いないでしょう。

ぜひ奥様と一緒に素敵なリラックスタイムを過ごしていただければ嬉しいです。

またぜひ冬の寝心地もお聞かせくださいね!

今後とも何卒よろしくお願いいたします。