こんにちは、店長です!
今回のお話は羽毛布団の選び方について。東京都にお住まいのお客様から以下のようなご相談メールをいただいたところからスタートいたします。
こんにちは。
20年間ダウナ羽毛布団を使用してきたのですが、去年シングルベッドに替えたタイミングで羽毛布団を辞めてみました。ベッドサイズを替えたときに大塚家具さんの勧めで肌掛け布団のみダウナを使用しています。
ダウナはほんとに軽くて温かくて最高なのですが…、、季節変わり目のカバーを外して交換する時,出てくる出てくる羽毛のほこりに耐えかねて、広告・宣伝で見かけた洗える布団を購入してしまいました。重くて,温かくなく後悔しています。
同じように洗える布団を使用した夫も寒さを感じていたようで、また前のダウナに戻したら?と言われましたが、中々決心がつきません。 そんな時ダウナのリフォーム記事を拝見して中身が同じ羽毛なら少しでも今の悩みが解決出来るかなと思いました。やはり寝具は大事です。
こちらのお客様、O様は大塚家具のダウナ羽毛布団を長年使用されていたそうです。着心地の良さ、暖かさにとても満足されていたのですが羽毛やホコリの吹き出しが気になるため、ホコリが出なくて清潔だと宣伝していた「洗える布団」というものを購入。その布団が重くて寒くてどうしようもなくて…。購入したことを後悔する結果になったとのこと。
旦那様にも相談しながらダウナに戻すことも考えるけれど、ホコリの吹き出しが気になるので踏ん切りがつかない。
一体どうすれば良いのでしょうか、という切実なご相談です。
ダウナからホコリが吹き出すのは止められません。
使用する状況や年数によって異なりますが、ダウナは羽毛・ホコリが吹き出しやすい羽毛布団だいうことは紛れもない事実です。
理由は側生地の通気性が高いからです。
羽毛布団を製造する際の日本基準では生地の通気度(1秒間に生地を通過する空気量 :単位cc)を3~3.5ccまでと規定しています。これ以上通気度が高くなると羽毛の吹き出しが発生しやすくなるということで数値目標が設定されているのですが、ダウナの生地を当店が繊維品質試験場に依頼して独自に調べてみた結果5.9ccという日本基準の倍の数値になりました。
ダウナは大塚家具が販売していますが製造はドイツであり、側生地の製造もドイツで行われているため日本基準外でもまったく問題ないです。当店でもドイツ製の羽毛布団生地を取り扱っているので、日本基準とは考え方の異なる特殊な羽毛布団を製造することがもちろんあります。
このような通気性の高い生地を使用した羽毛布団では、
- 着心地が軽くなる
- 体にぴったりフィットする
- 空気の循環がスムーズに行われる
- 羽毛が空気を多く取り込むことができる
- 自らの体温が羽毛に伝わりやすくなる
- 暖かく感じるまでのスピードが速い
というたくさんの良いところがあります。今回のお客様、O様も長年ダウナを使用するなかで「軽くて暖かい着心地がとても気に入っている」というお気持ちでした。
一方で想定されるデメリットととして、
- 羽毛やホコリが吹き出しやすい
- 生地が薄いので破れやすい
- 汚れがついたときにシミ抜きすると穴が出来やすい
- 丸洗い・クリーニングに出すと失敗しやすい
という項目が挙げられます。ダウナをリフォーム相談でお預かりすると羽毛・ホコリの吹き出し相談がもっとも多いお悩み項目なのですが、生地の破れや穴も散見されます。ダウナ生地は糸の本数も少なく生地が薄いため使用期間10年を超えてくると破れや穴開きも同時に起きてしまうことが多いのです。
このほか、汚れがついた生地をシミ抜きしようとしたら破れてしまったという丸洗い業者様からの直接相談やクリーニング屋さんに丸洗いを依頼したら失敗してヘタってしまったなど、業者やプロにメンテナンスを頼んでも思わぬ劣化が発生してしまうことがあります。
当店でも一度、お客様からお預かりしたダウナを丸洗いして失敗したことがあります。生地は問題なかったのですが乾燥がうまくいかずに羽毛が絡まってしまったのです。
このときにはお客様にきちんとご説明してご了承いただいた後、布団を解体して中身をほぐし、洗浄・乾燥をもう一度丁寧に行いながらお直しいたしました。時間をかけて細かい作業を行うことで元の品質に戻すことができた経験は大きかったです。
この失敗と経験があるため、ダウナという羽毛布団の取り扱いにはかなり慎重に見極めていく必要があると改めて考えるようになりました。
まとめとして、ハウスダストやアレルギーが気になる方はダウナの購入を控えた方が良いと当店では判断いたします。
当店でも通気性の高い生地を使用した羽毛布団は一般商品とは一味違う着心地の良さがでるので人気なのですが、ホコリ対策を優先させた方が良い場合には羽毛の種類を変えたり生地の品質を別のタイプにしたりと、いろいろな選択肢をご提案しています。
ハウスダストが気になる方が大塚家具で羽毛布団を購入するならば「ティエドール」という商品がおすすめです。綿100%サテン織りという密度の高い側生地が使用されているため、通気度が2cc程度となり、ダウナよりも羽毛の吹き出しが発生するリスクを抑えることができます。
大塚家具「ティエドール」→https://www.idc-otsuka.jp/item/products/detail/21857
洗える布団が重くて寒い?
上記画像出典:https://nordicsleep.co.jp/products/detail/31
では、ダウナの変わりにO様が購入した「洗える布団」はどうだったのか?
ノルディックスリープというブランドの掛けふとんを購入して使ってみたところ、奥様も旦那様も重くて暖かさを感じない着心地に後悔したというのですが、調べてみるとフォスフレイクスと呼ばれるポリエチレン70%・ポリエステル30%の素材が中わたとして使用されている布団でした。側生地は綿100%です。
ウインターと呼ばれるタイプを購入したのでシングルサイズで1,350gの中身入り。
商品説明を読むと、
製品の詰め物は、ポリエチレンとポリエステルを混合した独自素材フォスフレイクスを使用。柔らかいながらも耐久性に優れ、フワフワ感をキープします。
空気を取り込むことで温度調節機能を保持。一晩中快適な温度を保ちます。空気を循環させることができるので、乾いた状態をキープすることが可能です。
製品を包む布には、柔らかいながらも丈夫なキャンブリック生地(綿100%)を使用。 有害な物質を一切使用せず、環境保護基準に従い製造された繊維製品の国際的な安全基準、STANDARD 100 by Oeko-Tex(製品分類I)の認証を取得。
お手入れが楽で、洗濯機での丸洗い可能、低温(60度以下)設定の乾燥機で乾かすことができます。
とのこと。中身がポリエチレン・ポリエステル素材なので羽毛とはまったく性能が異なる布団だということがよくわかります。羽毛のように濡れると乾きにくい素材ではないのでお洗濯が簡単で、ご家庭の洗濯機でもお手入れがしやすいことは便利ですね。
商品自体に問題は特別ありません。強いて言うなら冬用を謳うのであればもう少し中身の量を増やすべきかなと。それくらいです。寝具を定期的に洗いたいという方には重宝するものだと思います。
当店ではダクロンというアメリカの繊維メーカー:インビスタが製造するポリエステル繊維を使用した布団を取り扱っています。ノルディックスリープのように丸洗い可能、お手入れがしやすいメリットがあるため、ホコリアレルギーの方や羽毛製品を使用することに不安感のあるお客様にご紹介するのですが、冬用であれば中身量を1,6kg〜1,7kg入りにしています。それぐらい入れないと保温性がなかなか満足いくところまで出てこない、というのが当店の見解です。
単純に暖かさを比べた場合、ポリエステル素材と羽毛では圧倒的に羽毛の方があったかいです。
特にダウナのようなポーランド産ホワイトマザーグースダウンという高品質なものとノルディックスリープを比べてしまうのは酷な話です。膨らむ力、保温性、湿度を調整する能力、どれをとってもマザーグースダウン(羽毛)の方が圧倒的に優れています。
ノルディックスリープしかり、この手の布団で一番気になるのはポリエチレン・ポリエステル素材が吸湿性に欠けるところです。汗や湿気が布団内部でたまってしまい逃げ場がなくなってしまうため、ジメジメ湿気による不快感や冷えを感じやすくなります。
羽毛の場合は空気を含む・排出するという呼吸のような循環機能のおかげで湿気を吸収・発散するというサイクルが生まれます。そのおかげで寝ている間の湿気調整もスムーズに行うことができるため、睡眠環境をしっかり維持することにつながります。
側生地は綿100%なのでそこは評価できるポイントではありますが、キャンブリック生地という説明なのでおそらく40番手くらいのやや太い糸で織られたものだと想像します。質感はブロードやツイルに近いため、ダウナの生地に比べるとかなりガサガサ重たい印象になってしまうでしょう。O様が感じてしまった「重くて寒い」という感想もうなづけます。
どんな羽毛布団がO様に最適なのかを考える。
O様とメッセージのやりとりを重ね、いろいろなお話をお伺いいたしました。
- お店に行って寝具売り場を見てもどれを選べば良いのかわからない
- 店員さんのゴリ押しが苦手
- 前回の失敗があるので、もう失敗したくない!
ご自身でもたくさんの情報を検索して調べてみたりしているのですが、どんどん沼にハマっていくような感覚に陥ってしまうので、寝具を選ぶということに不安を感じているご様子でした。。これはあまり健全ではありません。
なので一度頭をリフレッシュさせて、購入するというゴールは一旦置いておいて。
自分に合う掛け布団はどのようなものだろう、ということだけを一緒に考えるようにしました。
掛け布団の仕事は「適度な保温性を維持して体に負担をかけないこと」です。
暑すぎてもダメ、寒すぎてもダメ。軽すぎては体にフィットせず、重すぎては腰が痛くなります。
適度な保温性を見つけるためにはお客様の体質と感覚、そしてお住まいの環境が密接に関わってきます。
今回の条件としては奥様・旦那様ともに冷え性ではないこと。そしてお住まいは東京都内のマンション。気密性は高いが寝室は北側なので比較的日射量は少ないという条件でした。
東京都の2020年から2023年の気温データを見ながら最低気温の平均をチェックすると、
12月は2-3℃、1月は0-1℃、2月は2℃、 3月は5-7℃ の範囲になるということが分かりました。 当店がある愛媛県に比べると最低気温が2℃ほど低いデータになるので、このあたりから掛け布団としての保温性を計算していきます。
O様の希望としては、寒い冬でもこれ1枚で過ごせる着心地が理想だということもお伺いしていましたので、ある程度は羽毛量を使用しながらボリューム感を出していく必要があります。
そして着心地の軽さも重要です。ノルディックスリープで実感してしまった重みのある着心地ではなく、ダウナに近いような軽やかな着心地を実現できるものを採用します。
そして最後は、羽毛の吹き出しがないような工夫。着心地に影響しない程度に通気性を抑え、小さなホコリが出にくいようにコントロールしなければなりません。
導き出した答えは「羽毛量800g・日本製の側生地を使用した羽毛布団のオーダーメイド」でした。
少ない量でも保温性をしっかり実現することができるようにと選んだ原料はポーランド産ホワイトマザーグースダウンです。
ダウナよりもホコリが出にくくなるようにしたいので、マザーグースダウンを手作業で選別し極力ホコリの混入がない原料を採用いたしました。
一粒ずつの大きさと弾力性はいわずもがな。長年使用しても潰れにくい弾力性があるため、生地からの吹き出しを抑えることにもつながります。
側生地は綿100%の平織り。100番手という極細糸で織り上げているため、ダウナと同等の軽量化を図ることができます。
それでいて通気度は3.5cc。空気の循環をスムーズに行えるように維持しながらホコリ・羽毛の吹き出しリスクへも対応いたしました。
羽毛量800gと定めるまでには何度か迷いもありました。
マザーグースダウンのパワーを考えると700gでも十分なのではないか。いやいや750gにした方がバランスが取りやすいぞ。
かといってこれからご夫婦の年齢を考えると、筋肉量の低下によってこれから徐々に体質的に寒さを感じやすくなることも想定される。長くご愛用いただくなかでも満足感があるようにしたい、という気持ちを込めて最終的な800g入りという結論に達しました。
完成した羽毛布団をお届けしてから数日後。O様に寝心地についてどう感じるのかを聞いてみたところ、
三浦さま
遅い時間に申し訳ありません。 ご連絡ありがとうございました。
お布団は快適です。 初日は軽すぎて、寒い?かと思ったのですが.… 今までが重すぎたのですね。 毎日快適です!
夫も喜んでいます。本当にありがとうございました。
今は使わずに眠っている、ダウナのダブルサイズもシングルに出来るかなぁとも思っているのですが… 。
また少し落ち着いてから考えます。
本当にありがとうございました。
という嬉しいコメントをいただくことができました。
寝心地に満足できなければ返品していただいて作り直すことも想定していたのですが、ひとまずご夫婦おふたりともに快適に眠ることができているようでほっと一安心です。
これから春が来て暖かくなって、そしてまた寒い季節がやってきて。
暖かい羽毛布団に包み込まれる幸せはなんともいえません。ぜひ安心してゆっくりとおやすみいただければと思います。
O様、これからもアフターフォローやメンテナンスについてお気軽にご相談いただけますと幸いです。
今後とも何卒よろしくお願いいたします!