こんにちは、店長です!暖かくて、軽くて、ふわふわで。寒い冬に大活躍してくれるのはもちろんのこと、春や秋など季節を通して快適な寝心地を実現してくれる寝具といえば『羽毛布団』です。
購入してから10年は当たり前、長ければ30年以上同じものを使っているという方も珍しくないのですが、今日は羽毛布団の寿命について実例に基づきながら考えてみようと思います。
20年前に購入した西川製の羽毛布団
「良い羽毛布団って結構お値段が高いけれど、実際何年くらい使えるの?」
「製造メーカーはやっぱり西川が本当に良いの?」
お客様からこのようなご質問、ご相談をいただくことが本当に多いです。せっかく毎日使う寝具ですから着心地に満足できるものを使用したいし、できるだけ長く使える方がコストパフォーマンス的にもお得になりますよね。
さらに品質が良いものなら買い替えをしなくてもリフォームで再利用できる可能性もありますから、やっぱり寿命っていうのはかなり気になるところです。
では実際に調べてみよう!ということで、東京都にお住まいのお客様からお預かりした西川製・ご使用年数20年の羽毛布団を参考例として、布団の状態を詳しくチェックしていきます。
この羽毛布団を当店でお預かりした理由は「長年使ってヘタってしまったので綺麗にリフォームしたい」というご希望をかなえるためです。
お客様からご相談いただいた内容は、
20年以上使用してきました羽毛布団がありますが、品質表示
も消えてどんな羽毛が入っているのかもわかりません。手入れもあ まりできずに使用してきてしまったので羽毛もかなり傷んでいる事 が予想されますが、リフォームできる状態なのか新品購入したほう が良いのか一度診断して頂けたらと思っています。
というものでした。長年ご使用になったことで羽毛の劣化を心配されています。それとともにリフォームできるのか、いっそのこと新品購入の方が良いのか迷われているとのこと。
お客様の希望にお応えするため、羽毛布団の状態を詳しくチェックして結果をお伝えしようと思います!
こちらが実際にお預かりしたもの。「大阪西川」というロゴマークがしっかり入っている通り、西川製造の羽毛布団です。
西川は大きく分けて東京・大阪・京都というブランドがあったのですが、2019年に全て統合されて現在は「西川株式会社」という1つになっています。今回お預かりしたのが在りし日の大阪西川製の羽毛布団です。
購入してから20年が経過しているので流石に使用感はそれなりに。所々にシミや汚れが付いていたり、柄も色褪せている状態です。羽毛の膨らみも多少落ちているかな。
しかし、生地はまだまだ目地が緩まずに穴や破れも発生していません。縫製も細かくて羽毛の吹き出しもなし。綿100%のしっかりした布の耐久性は今でも健在です。
布団の中に入っている羽毛の状態はどうでしょうか?品質レベルをチェックするとともに劣化具合を確認してみましょう。
お、白くてふわふわの羽毛が出てきました。
触った瞬間に、もちもちと弾力性を感じる質感と指先にほのかに伝わる暖かさ。
この段階で大体分かります。あ、良い羽毛だなって思いました。
粗悪な羽毛は手で触った時に弾力性がなくスカスカに感じることが多いです。長年使用によって弱っている羽毛なども触ればすぐに分かります。
トレイに広げて、俯瞰で見てみる。ここでチェックするのはダウン率です。
羽毛布団の広告や商品説明でよく見かける「ダウン85%」とか「93%」などの数値をダウン率といい、保温性や布団としてのボリューム感を司るダウンがどのくらいミックスされているのかを示します。大体は布団に付いているラベルに記載されているので気になる方はチェックしてみてください。ダウンが多ければ多いほどふわふわに膨らんでとってもあったかい、いわゆる品質が良い羽毛であると言われています。
羽毛布団の性能を比較する際には必ずダウン率の話になるのですが、ダウン率が高ければ絶対に品質も高い、とも言い切れないんですよねコレが。
なかなか単純にいかない羽毛のおなはし。これはまた別記事で書こうと思います。
ラベルの印字が読めなくなっていたので正確な数値は不明ですが、お預かりした布団から取り出した羽毛のダウン率は間違いなく90%以上です。おそらく西川製の羽毛布団での最高ランクである95%クラスだと思います。フェザー(羽根の硬い芯)の部分の混入はほとんどなく、羽毛のほとんどがダウン(ふわふわの綿毛)で構成されていることを目視で確認しました。
次に羽毛の劣化具合をチェック。
手作業で羽毛を選別してみると、形が崩れてホコリのようになっている羽毛(上の写真)を発見しました。これが劣化した羽毛です。細かく千切れていたり小さく萎んでしまったり。劣化が進むと糸くずのように変形してしまうこともあるのですが、今回はそんなことにはなっていませんでした。20年という使用期間を考えるとむしろ劣化は少なく感じます。おそらく羽毛の品質が高い分耐久性も強かったので、長年使用による摩擦にも耐えられたのでしょう。
寝返りや引っ張り合いによって生じるダメージは徐々に布団全体に広がっていきます。そこに汗や湿気などの汚れの蓄積が相まってしまうと徐々に羽毛自体の劣化を招き、あれだけ大きくふわふわだったダウンも小さく壊れてしまいます。
これは品質がどれほど良い羽毛でも避けることができない現象ですが、元々の質が弱かったり成長が未熟な羽毛では劣化スピードがさらに早まるというのは言わずもがなです。
こちらは綺麗な状態を維持している羽毛です。とんでもなく大きなダウンで、一つ一つの粒立ちがはっきりしている。最高ですね、テンション上がるレベルの羽毛です!
ダウンの膨らみと大きさを見る限り、成熟したマザーグース(親鳥のガチョウ)から採取された原料で間違いなさそう。20年以上前に製造された羽毛布団には「ハンドピック」と呼ばれる、手作業で採取された羽毛が使用されていることがあるのですが、この羽毛布団にもそのレベルのものが入っているのではないかなとみます。
※ハンドピックは動物愛護の観点から現在は禁止されています。
ここまでチェックしてきた結果を総合して判断すると、20年経ってもこの西川製羽毛布団はまだまだ使えます。むしろ現在の普及品よりも圧倒的に品質が良いので、捨ててしまうのはとてももったいないです。
こういう羽毛布団のつくりと品質を見ると西川の商品ってやっぱりスゴイなぁって思いますね。品質も申し分ないのでリフォームにも十分再利用可能です。このタイミングでしっかり綺麗にお手入れすることで、より耐久年数を伸ばすことができると思います。
リフォームの出来上がり!
<リフォーム結果>
- シングルサイズ➡︎シングルサイズへのリフォーム
- プレミアムダウンウォッシュ(布団を解体して取り出した羽毛を直接洗浄する)
- 新品羽毛の補充:中国吉林省産ホワイトマザーグースダウン95%を300g補充
- 新品生地:綿100%・80番手サテン織り(1㎡あたりの重さ:114g)
- キルティング:たて6×よこ5マスキルト マチの高さ7cm
- 羽毛充てん量:1.3kg
出来上がり参考価格:66,000円(税込)
羽毛の状態をしっかり復元させて、側生地も新調しながら綺麗に仕上げる。お預かりした布団の状態も良かったですからね、ふんわりとしたボリュームも期待通り回復してくれました!
劣化して小さくなった羽毛はすべて取り除いているので、目減りした分を新しい羽毛で補充しています。補充に使うのはホワイトマザーグースダウン95%。中国吉林省でじっくり生育された親鳥で、手作業で羽毛を選別するという細かな作業を行いながら品質を高めています。
側生地は綿100%。お預かりした西川製の羽毛布団の質感と同等に仕上げるためにサテン織り生地の柔らかい質感を採用しました。カラーはホワイト無地。淡い色味のカバーとも相性が良いです。
出来上がった羽毛布団をお届けしてすぐ、お客様からご連絡をいただきました!
以下、メールの原文ママです。
三浦綿業様先程、羽毛布団を受け取りました。以前は、へたり気味だった布団が袋から出した途端、空気を含んでどんどん膨らんでふかふかになりました。 古い物でしたので、どれ位回復するのか心配していましたが出来上がりに大満足してい ます。お天気の良い日にお布団を干すのが楽しみです。 使用するのはまだまだ先になりますが、今年の冬は暖かく快適に過ごせそうです。 このリフォームを機にこれから少しずつ家族の布団の見直しを考えていこうと思っています。 特に娘は、来年から社会人になるのを機にお布団も考えなくてはいけないので すが、 アレルギー鼻炎があるためお布団選びは難しい所があります。 今までは、何となく選んできてしまったお布団ですが、これからは健康や快眠の事を考えて選んでいこうと思います。 新型コロナで大変な時期に遠方からの古いお布団のリフォーム依頼にも関わらず、 丁寧なご説明と詳しい画像を送って頂き安心してリフォームをお願 いする事ができました。 いろいろお世話になり有難うございました。
という有難いお言葉をいただきました。お客様に喜んでいただくことができて本当に嬉しいです!!
お手入れ前に比べると布団のふんわり感は見違えるように回復できたので、一目見ただけでその違いに気づくことができます。リフォームの仕上がり具合にご満足いただけているようでまずはホッとしました。
あとはこれから実際にお使いいただきながら着心地をじっくりお試しいただきたいところ。適度に暖かくふんわりと軽い着心地に包まれながら、ぐっすりおやすみくださいね☆
U様、この度は当店をご利用いただきまして誠にありがとうございます。
また何かお困りごとがありましたらいつでもご相談くださいませ!