こんにちは、店長です!
7月に入って気温が高くなってきたこともあり、羽毛布団リフォームのご注文がつづいています!
「生地が破れて羽毛が吹き出してしまった・・・」や「長年使用しているので羽毛のふくらみが減ってしまった」など、さまざまなお悩みを抱えた羽毛布団が当店に持ち込まえる一方で、「この羽毛布団をリフォームできるかどうかチェックして欲しい」という依頼もここ最近増えてきています。
当店ではリフォームで持ち込まれた羽毛布団はすべて生地を開いて、中に入っている羽毛の状態を一つひとつチェックしています。
羽毛自体の汚れや劣化具合は外から見ただけでは分からないですからね。この羽毛布団は本当にリフォームして大丈夫なのか、お金をかけてリフォームする価値があるのか。お客様が一番知りたいことをきちんとご説明するようにしています。
リフォームできるかどうかを判断する簡単な目安としては
- 劣化していないダウンがどれくらい残っているか。
- フェザーが多く混じっているものは基本的にNG。
この2つのポイントをチェックしていくと分かりやすいです。
特に2番目のフェザーの混合率。フェザーとは硬い芯が付いた羽根のことで、これが多いとガサガサしたり芯が生地を突き破ってきたりします。枕やクッションに使用する場合は硬くてしっかりしているフェザーを多く入れることもありますが、保温性と軽やかな寝心地を求める羽毛布団にとってフェザーが多く入ることはあまり喜ばしいことではありません。
個人的には羽毛布団にはフェザー10%以下の混合率が理想かなと思っています。気持ち良くお使いいただくことを考えれば最低でもフェザー15%までにとどめたいですね。
今回はお客様から実際にお預かりした羽毛布団5種類を比較して、リフォームできるかどうかをじっくり検証してきます!
事例①25年使用・ダブルサイズ・ダウン率95%
まず一つ目の羽毛はこちら。ヘビースモーカーのお父さんが25年以上使っていた羽毛布団で、サイズはダブルサイズです。
布団に付いていたラベルにはダウン95%・フェザー5%という表示が。ラベルだけを見れば品質が高そうな布団だと予想していましたが、長年に渡り使用していたことと男性がお使いだったということもあり、羽毛がかなり黄色く変色しています。
たばこのヤニや汗・皮脂の汚れが生地を通り越して羽毛自体に付いてしまっている状態です。
羽毛を取り出してみると、ダウンが複数絡まり合ってピリング状態になっているものが多いです。小麦粉がダマになっている感じと似てますね。これではダウンが大きく開いてくれないので、ふくらみや保温性が本来の半分以下になっていると予想します。
ダウンがちぎれて粉々になっているものもちらほら。経年劣化によりダウン自体が小さくなっている、これは仕方のないことなのですが、羽毛が壊れて細かいファイバーが多くなってくると生地からホコリが吹き出しやすくなります。
正常なダウンもちゃんと残ってはいます。ダウン率95%の表示だったので元の品質はそれなりに良いはずです。
しかし、ダウンをちょっと触るとポロポロと崩れてしまうんですよね…、どうしよう。これではリフォーム行程の洗浄・乾燥の段階で羽毛が壊れてしまう可能性が高いです。
汚れによる変色・羽毛の絡まりは洗浄すればキレイに復元していくのですが、羽毛がそれに持ちこたえられるかどうかがちょっと心配。25年以上お使いになっていますからね、当然といえば当然か、、、。
総合的に判断してこちらの羽毛はリフォームしない方が良いということをお伝えしました。
事例②ジャパンライフ製・高額羽毛ふとん
つづいてはこちらの羽毛。メーカーはジャパンライフです。健康器具や寝具を販売していたある意味有名なメーカーで、度重なる業務停止命令などを受けた現在は事実上倒産しています。
この羽毛布団は冬用・夏用の2枚セット。生地には磁石が入っていて健康に良いという謳い文句が乗っかり、結構なお値段で購入されたそうです。
20年以上前に購入されて現在までずっと使っていたということだったので、羽毛の劣化はそれなりに進んでいる状態。ですがそれよりも目につくのがフェザーの多さ。硬い羽根が割と多めに入っている感じでした。
羽毛布団のラベル印字は消えてしまって見えなかったのでダウン・フェザーの%は完全には把握できませんが、おそらく20%以上はフェザーが入っていると思われます。
もちろん羽毛を探っていくとダウンも見つかります。しかし、いかんせんフェザーが多い。20年前に販売されていた羽毛布団だったからしょうがない・・・のかな?「品質が高い羽毛」とは決して言えないレベルです。
大きくてふわふわしていますが、これはダウンとは違う「類似ダウン」と呼ばれるものです。核がなく弾力性もないので、これが多くあっても保温性が高くなることはありません。
こういうのがちょこちょこ混じってるんですよね、品質が安定していない印象を受けます。
「高いお金を出して買ったから捨てるのがちょっともったいないの・・・」とお客様は仰っておりました。もちろんリフォームできないことはないですが、リフォームする価値があるかと聞かれたら答えはNOです。
この内容を正直にお客様にお話して、リフォームは止めた方が良いという結論に至りました。
事例③長年押入れにしまっていた羽毛布団
使用期間は13年。長年押入れにしまっていたというので製造された時期からはおよそ20年くらいは経っている羽毛布団です。
今までの羽毛とは見た目・色が全然違いますね。ホワイトではなく、ブラウン色の羽毛です。
このブラウンは汗や湿気の影響で付いた汚れではなく、鳥そのものの色。見た目は黒っぽいので変なのが混じっているのかとびっくりされることもありますが、使用にはまったく問題ないです。
ですが、その黒い羽の正体はフェザーでした。事例②よりも多くフェザーが混じっている状態なので、おそらくダウン70%・フェザー30%レベルの羽毛だと思います。これは多すぎます。
フェザーが多く入っているということは、保温性やふくらみの元になるダウンが少ないということ。保温性を十分確保することが難しくなり、何より着心地がゴワゴワします。
探っていけばダウンも綺麗なものがある程度残っていました。これをかき集めればリフォームは可能です。ですが、一般的な行程でリフォームしてもお客様の希望通りにふっくらと復元するかどうかは疑問。
またこれから気持ち良く使えるようにするならば、余分なフェザーを取り除いて新品羽毛の補充量を通常より増やす必要があるでしょう。これは羽毛の状態をチェックしたから分かることです。
フェザーの多さ・コスト的にみて、これはリフォームしない方が良いと判断しました。
事例④ダウン率93%・10年使用の羽毛布団
10年間使用のダブルサイズ羽毛布団。製造メーカーは不明ですが、商品ラベルには「ダウン93%・フェザー7%」という表示がかろうじて残っていました。
小さくなっているダウン・糸切れしているものなど経年劣化が見られますが、これは想定の範囲内。10年以上使った羽毛布団なな多かれ少なかれこういった劣化はあります。
ダウンを探してみるときっちり残っていました。大きくてしっかりしたダウンボールが数多くあったので、とりあえず一安心。これくらいの品質の羽毛を見るとホっとします(笑)。
表示通りフェザーの入り方も少ないので、これはリフォームで十分寝心地が復活できる品質だと判断しました。
事例⑤西川リビング製・7年使用
最後は寝具メーカー大手の西川リビング製の羽毛布団。シングルサイズで7年間使用、ラベル表示には「ダウン93%・フェザー7%」と書かれています。
7年ほどの使用なので、まだまだ羽毛が真っ白でキレイな状態です。事例①の羽毛と比べてみると汚れ・色の差がはっきり分かりますね。
羽毛の状態を詳しくみていくと羽毛のピリング(絡まり)がちょっと目に付く感じです。この程度であれば羽毛の洗浄と乾燥をしっかり行うことで羽毛一つひとつがほぐれてくれるから心配ないでしょう。
同時に出てきていたファイバーも洗浄時に取り除けばOKです。
ダウンボールを取り出してみました。ほどほどに大きさを保ったダウンです。このレベルなら十分リフォームする価値があるでしょう。
せっかくなのでこの布団から取り出したダウンと高品質ダウンを比べてみました。
左が取り出した羽毛。右がポーランド産グースダウン(DP440相当)です。
まぁ新品と使用後の羽毛を比べてもあまり意味がないですが、ダウンボールの大きさの違いは一目瞭然ですね。中心にある核は色が濃くて、羽枝も長い。触っても弾力があります。細かい差ではありますが、こういう品質の違いが羽毛布団の着心地に影響してきます。
羽毛布団は国内外いろいろなメーカーが販売していて、製造時期もさまざま・中に入っている羽毛のランクもバラバラです。それに加えて、使用年数・お使いだった方の性別などで羽毛の劣化具合は大きく変わります。
だからこそ、羽毛布団リフォームは一つずつ丁寧に考える必要があります。
- 使っている年数が長ければ、羽毛の洗浄と乾燥にきっちりと時間を割いてあげる方が良い。
- 中に入っている羽毛の劣化が進んでいれば、新しく補充する羽毛の量を増やす方が良い。
- 今までよりもっと軽い着心地が欲しいなら、生地にこだわった方がよい。
などなど。
均一のリフォーム行程・プランですべての羽毛布団が同じように復活してくれる、これはありえません。
どのようにすればお客様の羽毛布団を一番良い状態に復元できるか、より気持ち良く使えるように再生できるか。こんなことを考えながら羽毛布団リフォームを行っています。
リフォームについてのご相談はいつでも受付中ですので、お気軽にご相談くださいませ☆
それでは、また!