
こんにちは、店長です!
新緑の季節を迎え、お布団も冬用から春・夏へと衣替えのタイミングになり、リフォームや丸洗いクリーニングのご相談をいただくケースが増えてまいりました。
当店では一枚ずつお布団の状態と品質をチェックしてお手入れを行なってまいりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
さて今回は福岡県にお住まいのお客様からメールが届き、羽毛布団リフォームについてお問い合わせいただきました。
ご相談としてはリフォームしたい羽毛布団が2枚あり、ひとつは10年以上使用したダブルサイズ羽毛布団をセミダブルにしたいという内容。そしてもう一方は最近購入されたセミダブルサイズ羽毛布団の寝心地になんだか違和感があるということで、
主人が東京の方へ転勤の為にこの布団を急ぎで購入したのです
が、昨日初めて寝てみたらゴワゴワして重くて全くダメだ、、ということでした。
というお悩みがありました。
羽毛布団の着心地が自分に合わない理由。

お預かりした羽毛布団がこちら。2025年3月に購入して一日しか使っていない、新品です。

販売元はタンスのゲン株式会社。楽天やAmazonにも公式オンラインショップがあるので利用したことがある方も多いはず。羽毛布団から敷き布団、マットレス、ベッドその他インテリア商品まで幅広く取り扱っているネット通販会社です。
価格に関しても非常に幅広く、お手頃商品から高品質なものまでなんでも揃うショップなので業界でもとても有名なお店ですね。今回の羽毛布団はこちらで購入されたものでした。

なぜお客様が「ゴワゴワして重くてしんどい」という結果になってしまったのか。羽毛布団のスペックと仕立て方をくまなくチェックしてみます。

まずは中に入っている羽毛原料から。購入時に付いているラベルにはウクライナ産羽毛が使用されていると明記されています。
ウクライナは元々穀物の生産・輸出がさかんだったので、ダックやグースの餌になる飼料が非常に多く飼育環境も整っています。ウクライナ産羽毛は日本の寝具メーカーも多く取り扱っており、品質に不備があるといった心配はまったくありません。

羽毛のダウン率も非常に高く、ダウン95%/フェザー5%という表記になっていました。ダウンは胸毛部分、フェザーは硬い芯が付いた羽根部分を表します。
羽毛量も1.6kg入りということで、セミダブルサイズとして冬に使用することを想定された作りになっています。

ダウンパワーは440。しっかりと空気を含みながら膨らむ力が強いことを示しています。
ダウンジャケットの商品説明でよく見かけるフィルパワーは760相当の数字。アパレルブランド・カナダグースではフィルパワー750相当の羽毛が使用されているダウンジャケットは「氷点下の環境で日常的に使用できる」という説明があるので、しっかりと保温性を感じることができる原料だということがわかります。
この点でいうと、ここまで品質の高い羽毛原料であれば1.6kgは入れすぎなのでは?という印象があります。私が作るなら1.4kg入りにして保温性を適度にコントロールし、日本の住宅事情にも合わせた形にするかなと思います。
事実、お客様が使用すると重くて暑すぎるという結果になったのですが、高気密・高断熱の住宅では羽毛がたくさん入った布団は暑すぎて扱いにくいという現象が起きやすいですね。
リフォームするなら羽毛量はしっかり再計算して見積もりし直した方が良さそうです。

また、キルティングについては二層式キルトが採用されていました。布団の裏表でマス目をずらしながら羽毛がより大きく膨らむように工夫された方法です。
寒がりさんにはとても重宝するキルトパターンではありますが、今回はちょっと裏目に出てしまったイメージ。二層にすると布団内部に仕切りをひとつ追加するということになるので、その分生地の重みがプラスされてしまいます。
その差は250〜300g程度。幅の広いセミダブルサイズになると生地の重みが体にどっしりとかかってきてしまい、寝返りがしんどく体にぴったりフィット感も薄れてくると軽やかな羽毛布団の魅力がどんどん失われていきます。
ゴワゴワして重いという理由は羽毛量と二層式キルトによる弊害である、と判断することができました。
リフォームでどう変わる?

<リフォーム実施内容>
- お預かりした羽毛布団を解体して中身を取り出す
- 取り出した羽毛はそのまま再利用する(洗浄は今回無し)
- 側生地を新調する(ドイツ製 最軽量 綿100%サテン織り)
- 側生地に羽毛を吹き込む
- 羽毛量:1,500g入り
- 一層式立体キルト たて6マス、よこ5マス
- セミダブルサイズ(170×210cm)にお仕立て
出来上がり金額:62,800円(税込)

お預かりした羽毛布団をリフォームするにあたり、お客様のご希望をしっかりお伺いしながらカタチにしていきました。
- 側生地は綿100%にして二層式は止める
- 羽毛量は減らしても良いが、布団一枚で冬でも暖かい着心地はキープしたい
- サイズはそのままセミダブル
という希望をポイントとし、作業を進めていきます。

側生地にはドイツ製の綿100%を採用いたしました。極細糸で織りあげたことで生まれる軽さと手に触れた質感の良さは圧倒的です。
今回、タンスのゲンさんで購入された布団生地の重さ(綿100%80番手サテン織り)は1,300gほど。
対して新調したドイツ製生地の重さは800gほど。これで500gの減量に成功することができました!

羽毛量は1,500g入りに修正。はじめのご提案としては1,400gとする方向性もあったのですが、冬でも一枚で過ごせるボリューム感を維持したいというご希望のため、1,500g入りにすると判断しています。
もし、暑すぎたらまたお預かりして再度羽毛量を変更するということもできますので、使いながら決めていくということも可能です。

羽毛量が少なくなってもこの膨らみ。やりすぎではなく、ちょうどいいを目指す。これが私たちの考えです。
リフォームが完成した羽毛布団をお届けし、お客様からはこんな感想をいただきました。
先程、受け取り致しました。
この度は色々とご相談にのって頂きましてありがとうございます。 また、とても綺麗に縫製して頂きありがとうございます。
生地ですが、思っていたよりもパリパリ感が気になるのですが、使用していると馴染んでくるものなのでしょうか?
側生地についてはお使いいただくうちにとろけていくような柔らかさが出てきてくれるのでご安心ください。今までよりもずっと体にぴたっと吸い付くようなフィット感が実現されるはずです。
綺麗に仕上がった羽毛布団、これからぜひ長くご愛用いただくことができればと思います。
お手入れやメンテナンスなど定期的にご案内しながらサポートさせていただきますので、今後とも何卒よろしくお願いいたします!