京都西川のダブルサイズ羽毛布団をセミダブルにリフォームしたい!

こんにちは、店長です!

今回は大阪府にお住まいのお客様から羽毛布団リフォームについてのご相談を頂戴しました。

メールでお問い合わせいただいた内容を見ると、

ダブルからダブルにリフォームか、ダブルからセミダブルにするか迷っています。

また、敷き布団も同じようにリフォームすることが可能か?また、金額を教えてください。 よろしくお願いいたします。

というメッセージとともに羽毛の吹き出し・生地の破れに困っているという項目にチェックが付いていました。リフォームを検討している羽毛布団は購入から20年以上経過しているとのことです。

敷き布団も同時に打ち直しできるかどうか検討したのですが、西川製の既製品だったので生地を外すことはできるのですが式布団の中身を解体してもう一度ほぐしながらリサイズするということができない素材でした。昔ながらの綿布団なら打ち直してリフォームすることができるのですが今回はお役に立つことができず…。

お客様には当店で出来ることとリフォーム内容をお伝えし、リフォーム金額の目安と完成までの日数(今なら2週間から3週間)をご連絡。ご納得いただいたところで羽毛布団をお預かりしてリフォーできるかどうかを診断するところからスタートいたします!

お預かりした羽毛布団がこちら。

京都西川というロゴマークの上は大きく「ローズ羽毛ふとん」の印字。現在は社名変更・統合によって京都西川という名前は無くなってしまったのですが、寝具メーカーとして有名な西川製の羽毛布団です。

京都西川は羽毛布団や毛布、冬用のあったか寝具の製造が得意なメーカーでした。ローズという名称が付くアイテムは京都西川製のなかでも品質グレードが高いということを示します。ローズシリーズは寝具を専門的に取り扱うショップや百貨店に並ぶことが多いので、おそらくこの羽毛布団を購入されたときにはたくさんの種類のなかからしっかり品質を吟味して選ばれたのだと思います。

品質表示ラベルの印字は大部分が消えていましたが、「93」や「7」、「1.7」という数字がかすかに見えます。この暗号のような数字は私たち寝具専門店からすれば「あ〜、あのことね。なるほどなるほど!」とすぐに意味を理解することができます。

93と7は中に入っている羽毛のダウン率のこと。ふわふわと柔らかい綿毛部分はダウンと呼ばれ、硬い羽根の芯が付いている部分はフェザーと呼ばれるのですが、こちらの数字からはダウン93%/フェザー7%の原料使用という情報を読み取ることができます。

フェザーの比率が多くなるとガサガサした質感とともに暖かさが少なくなるため、ふんわりと軽やかな着心地を選びたいというときにはまずこのダウン率という数字が目安になります。

また「1,7」という数字は羽毛のグラム数を示します。単位はkg表示なので、この羽毛布団には1,7kg羽毛が入っていますよということ。1,7kg入りは冬に使用することを想定されたグラム数であり、しっかりと保温性を感じることができるようにボリューム感と膨らむパワーが重視された設計だと捉えることができます。

布団の状態はいうと、20年以上使用してきたことによる劣化がところどころに現れているようです。布団をチェックするために広げていると羽毛やホコリがちらほらと吹き出してくることが分かりました。

吹き出しの原因は生地の破れ。いくつかの場所にまたがって破れが発生しているのですが、お客様も頑張ってご自身で補修されていたようです。丁寧にひとつずつ縫い合わせていたのですが、やはり羽毛の吹き出しを完全に止めることは至難の技です。

破れた部分を縫い合わせることで逆に穴が広がってしまうこともありますので、手遅れになる前にご相談いただければと思います!

さて、次は中に入っている羽毛の状態をチェックします。

生地を少し開きながら羽毛を取り出してみようとしていると、、、

あれ?生地を開いても羽毛がありません!一体どういうことなのでしょうか?

実はこの羽毛布団、ダブルフェイスと呼ばれる特殊な縫製で仕上げられたものでした。

簡単にいうと2枚の羽毛布団を互い違いにくっつけて1枚にしたということなのですが、2層構造のおかげでデッドエアゾーンと呼ばれる空気が入り込む部屋が出来上がり、通常よりも羽毛布団が膨らみやすく保温性をアップさせるという仕組みになります。

そのため内部構造として生地も2重になっているので、もうひとつ分解しないと中身に辿りつかないということなのです。

保温性の強い羽毛布団の製造を得意としていた京都西川ならではのクオリティですね。

生地をほどきながら羽毛を取り出すことに成功。白くてふわふわとした羽毛がたくさん出てきました。

ここから手作業で選別しながら状態を見極めていきます。

まずは小さなホコリの量をチェック。購入から20年以上経過していることを考えると羽毛にも相当数のダメージが蓄積されていることでしょう。

擦れたり圧がかかることによって壊れた羽毛はだんだん小さくなってホコリのような形に姿を変える。このホコリが多くなると保温性の低下とともに生地から吹き出してしまうことがあります。

写真のようなファイバー状のものがホコリなのですが、状態としては想定の範囲内です。もっとホコリが出てくるようなら元気な羽毛は少なく再利用できる見込みがないかも…となってしまうのですが、この程度であればホコリを取り除くことで綺麗にリフレッシュすることができるはずです。

今度は綺麗な形を維持している良質な羽毛をピックアップしてみました。

先ほどの写真とはまったく違う、大きくてふわふわとした、これぞダウン!という原料を見つけることができました。

羽毛は本来耐久性の高い素材なので、やみくもに捨ててしまうには非常にもったいないです。

特に質の良い原料が採取されていた時代のものなら尚更。空気を掴みながらふんわりと膨らむパワーが強く、密度も高いのでモチモチと弾む弾力性も兼ね備えています。

もちろん並の羽毛品質であればだんだんと崩れてしまうのですが、今回お預かりした羽毛は成熟していて形も整っています。リフォームすればこれからも余裕をもって長く愛用することができると判断することができました!

リフォームの完成!

<リフォーム結果>

  • ダブルサイズ➡︎セミダブルサイズへのリフォーム
  • プレミアムダウンウォッシュ(布団を解体して取り出した羽毛を直接洗浄する)
  • 新品羽毛の補充:ポーランド産ホワイトグースダウン93%を200g補充
  • 新品生地:綿100%・80番手サテン織り(1㎡あたりの重さ:114g)
  • キルティング:2層式キルト
  • 羽毛充てん量:1.45kg

出来上がり参考価格:77,000円(税込)

リフォームが完成した羽毛布団がこちら。

側生地をすべて新調しておりますので、羽毛やホコリが吹き出す心配はもうありません。

お客様のご希望に合わせてセミダブルサイズにてお仕立て。ダブルサイズよりも20cm幅が狭くなることで取り回しやすく、お一人でお使いになるときにしっかりと体を包みこんでくれるので、寝返りをしても背中がはだけることがありません。

冬にこれ一枚で眠れる保温性を確保するため羽毛量は1,45kg入り。縫製も2層式にすることで空気の層ができやすく、ボリューム感溢れる仕上がりを目指しました。

もうすぐ春の陽気がやってくる季節なので、この羽毛布団が活躍してくれるのは来シーズンの秋冬になりそうです。

これからも末永くご愛用いただくことができれば嬉しいなと思います!

T様、この度はご遠方からご相談いただきまして誠にありがとうございました!またぜひ気になることがございましたらお気軽にお申し付けくださいませ。