30年以上前に購入した西川製の羽毛布団。ポーランド産羽毛を使用しているけれど品質はどう?

こんにちは、店長です!

今回は東京都にお住まいのお客様から羽毛布団のリフォームについてご相談いただきました。

当店ホームページのお問い合わせフォームから初めてのご連絡とともに「電話で詳しい話を聞きたい」というメッセージをいただいたので、お客様のご都合に合わせてお電話させていただきました。

リフォームを検討している羽毛布団の詳細をお伺いしてみると、

  • 西川製の羽毛布団。
  • サイズはシングルサイズ。
  • ご結婚のときにお母様からいただいたお品物。30年以上経過している。
  • だいぶヘタってきているが思い入れもあり、捨てずに使い続けている

というお話をいただきました。

ご自身でも使用年数的にそろそろ買い替えた方が良いのではと感じているのですが、もしリフォームして生まれ変わるのであれば使い続けたいというお気持ちがあるということで、いろいろ情報を探していたら当店を見つけたのでメッセージを送ってみたということでした。

ご遠方にも関わらずお問い合わせいただき、本当にありがとうございます!

当店では日本全国から寝具に関するご相談をいただいており、羽毛布団をお預かりしてお手入れやリフォームを承ることができます。

布団の状態チェックや診断、リフォームする際のお見積もりもあらかじめご紹介することができますので、ぜひお気軽にお問い合わせいただければと思います。

羽毛布団をこちらにお送りいただく際には宅配便で送るためのキットをご用意しています。そのキットをまずはお客様に用意させていただき、専用の袋に布団を入れて着払いにて当店までお送りいただきました。

お預かりした羽毛布団を広げるとこんな感じ。生地が破れたり大きなシミが付いていたりということはありませんが、全体的にボリューム感がなくなっていて、のっぺりした様子に見えます。

おそらく新品当時はもっと布団が膨らんで、ふわふわの状態だったのではないでしょうか。

品質表示タグの印字はきれいに残っていたので情報を確認してみると、製造メーカーには西川産業株式会社。東京西川と呼ばれることもありましたが、創業450年を超える老舗寝具メーカーのものです。

側生地は綿100%、羽毛品質としてはダウン80%・フェザー20%。フェザーという硬い羽根の混入率が15%よりも多いので、ホコリや細かいファイバーが発生しやすくなります。

理想をいえばフェザー10%以下にしたいところではありますが、30年以上前に購入されたということを考えればその当時に販売されていた羽毛布団のなかでは上位ランクだった可能性もありますので、固定観念にはとらわれないようにしたいところ。

ふわふわと柔らかいダウンがどれだけ残っているかによってリフォームする価値があるかどうかを判断することになりそうです。

お、ラベルにANIMEXのロゴマーク。歴史を感じるオールドマークですね。

ANIIMEXはポーランド有数の羽毛原料メーカー。グースの飼育から食肉加工、羽毛選別と輸出まで一貫した生産体制を整えていることにより、他メーカーよりも少し価格は上がりますがANIMEXから届く羽毛は抜群の品質を誇ります。

ポーランド自体が羽毛産地として世界でもトップクラスとして評価されているのですが、ポーランド現地内で複数ある羽毛メーカーのなかでもANIMEXは一目置かれる存在です。

西川製などの既製品を除いて、当店で販売する羽毛布団で「ポーランド産」とつく原料はすべてANIMEXが生産した羽毛です。2023年夏にポーランドに出向いてANIMEXの農場や工場を視察したのですが、製造工程はもちろん「そこまでやるの?」というくらい品質向上に対する意識が高く、手作業で選別された羽毛の美しさはやはり別格でした。

ANIMEX訪問で今までよりも羽毛のことがより大好きになったし、皆さまに自信を持っておすすめできる存在だということを改めて感じることができた、とても良い体験をすることができました。

そんなANIMEXが30年以上前に生産した羽毛原料が入っているということで、おのずとテンションが上がってきます。

どんなものが入っているのか実際に取り出してチェックしてみましょう!

取り出した羽毛がこちら。白くてふわふわの羽毛ですので、見た目にはホワイトダウンと呼ばれる種類の原料です。

手作業で選別してみると、思いの外フェザーが少ないことがわかりました。

フェザー20%の比率であればもっと大きな羽根や硬い芯が混じっていることがあるので、全体的な感触もややザラザラしているというかガサガサするというか、ふわっとした羽毛の質感とは少し違うところが出てきます。

それに比べると、経年劣化によって小さなホコリや羽毛のダメージは蓄積されているものの、中身がぐちゃぐちゃになっているということはありません。20年くらいの使用感かな?というようなイメージを持ちました。

一方で大きな羽毛をピックアップして集めてみるとこんな感じ。立体的な姿を維持しているダウンが多く、形も綺麗です。

30年以上経過している事実はありますが、状態は良さそう。ちょっとワクワクしてきます。

ただ、ダウンの大きさだけで判断するのはちょっと早いので、手で引っ張って強度も検証してみます。毛が抜けずにちゃんとキープしてくれればOKなのですが…。

劣化が進んだ羽毛は姿が大きくても触るだけでボロボロに崩れてしまうことがあるので、軽く引っ張ったり叩いてみて形が崩れないかどうかを確認する作業が有効です。

今回は引っ張りに対してもきちんと抵抗してくれて、毛が抜けてホコリが出てしまうこともなく。良質な羽毛としてまだまだ存在感を発揮してくれる羽毛たちがしっかり残っていることが確認できました!

もちろん、壊れてしまった羽毛やホコリ、細かいフェザーは混じっていますので、リフォーム工程のなかで丁寧に羽毛を洗浄しながら磨いていき、余計な部分はしっかり取り除こうと思います。

そのうえで、良質なダウンは捨てずに再利用する。リフォームする価値があるという事実をお客様に写真を交えながらお伝えし、これからもご愛用いただける羽毛布団としてリフォームすることが決定いたしました!

リフォームの完成!

<リフォーム結果>

  • シングルサイズ➡︎シングルサイズへのリフォーム
  • プレミアムダウンウォッシュ(布団を解体して取り出した羽毛を直接洗浄する)
  • 新品羽毛の補充:ポーランド産ホワイトグースダウン93%を200g追加
  • 新品生地:綿100%・日本製平織り生地(1㎡あたりの重さ:94g)
  • キルティング:たて6マス・よこ5マス/マチ5cm
  • 羽毛充てん量:1,000g入り

出来上がり参考価格:56,500円(税込)

リフォームが完成した仕上がり具合はこちら。ふんわりとした見た目とともに、軽やかで体にぴったりフィットする着心地を取り戻すことができました。

サイズはお預かりしたときから変わらずシングルサイズ。羽毛量は少し抑えめに1,000g入りにして、年中通してお使いいただくことができるスタイルにコントロールいたしました。

お客様からいただいたご要望でも「重くてぼってりした着心地はあまり得意ではない」というお話をいただいておりましたので、側生地も綿100%平織りという通気性の向上・軽量という特徴があるものを採用。

ふわっとした羽毛布団本来の着心地をいかんなく発揮することができるようにプランを組み立てています。

完成した羽毛布団をお届けし、その出来栄えをご覧いただいたお客様からこんなメッセージをいただきました。

羽毛布団、どうもありがとうございました✨

あんなに新品同様にしていただき嬉しいです。亡き母が持たせてくれた羽毛布団をこれからも大事に使います。

生地のひんやりとサラサラした感じがまた良いですね。

丁寧なお仕事ありがとうございました。

有り難いコメントをいただき本当に嬉しく思います!本当にありがとうございます。

購入から30年以上。普通なら捨ててしまっても良い年数なのかもしれません。

だけれど、お母様からの贈り物であること。そして結婚というひとつのタイミング、節目の思い出もある。なにより経年劣化に負けない高い品質の羽毛が入っていたこと。これだけの要素をふまえたなかで、当店としてはリフォームする価値があるのではと判断し、お客様にそのすべてをお話させていただきました。

お届けした羽毛布団がこれからも毎日の快適な睡眠をサポートするように、活躍してほしいなと思います。